今シーズン総括02

野手編第二弾。


今回はポイントの検証。改めてポイントを挙げてみると

1.選手起用にメリハリはついたか?

2.「秋山チルドレン」は育成できたか?


先ず最初のポイントについて。今季はレギュラーの故障が昨年より少なかった事(規定打席到達者は4人→7人に増加)もあり、私が問題視していた控え選手の起用にもメリハリがついた。具体的には

守備固め:山崎・森本・城所
代打:中西・小斎
代走:城所

といった具合か。かなり人数を絞ったのが分かる。守備要員については人数・人選共に適切と言えよう。ただ、中西や小斎のような経験の少ない選手を代打中心で起用したのには疑問が残る。というのも、代打で結果を残すには経験をベースにした勝負勘が必要になるからだ。セ・リーグで複数年の間代打として活躍していた立浪や八木、桧山、真中といった顔ぶれを見ればその事は分かるだろう。
いくら「穴のない打線」を作ろうとしても誰かが不振に陥ったり怪我をしたりで穴は出来てしまうもの。更にホークスは(特に高卒の)若手野手を1軍で育てる時期に来ている。これは数年前のドラフトで高校生の野手積極的に獲得する、という方針を採った以上チーム力の維持の為には避けられないことなのだ。だからこそ、スタメンには若手を起用して経験を積ませつつ、代打の切り札にはベテラン選手を配置して勝負は確実にモノにする、というバランス感覚が必要になるのだ。


次のポイントへ移ろう。今季1軍での出場機会の増えた25歳以下の野手は以下の通り。

明石(29試合→48試合)
江川(2試合→6試合)
城所(49試合→91試合)
長谷川(71試合→143試合・規定打席到達)

※08年
明石(15試合→29試合)
金子(一軍出場なし→32試合)
城所(22試合→49試合)
小斎(4試合→39試合)
中西(一軍出場なし→59試合)
長谷川(一軍出場なし→71試合)
松田(74試合→142試合・規定打席到達)

怪我人が続出した08年に比べれば若手の出場機会が減るのは仕方ない。ただ、松中や小久保といった主力に衰えが顕著に現れて来ているという事実から逃げてはいけない。特に小久保の衰えは深刻だ。いくら「つなぎの4番」として彼を評価しても、つなぎの4番としてはあまりに低い打率(.266)。規定打席に乗ったシーズンでは最低の本塁打数。後1〜2年はスタメンで出たとしても存在感を見せられるだろうが、成績の劇的な上昇は考えにくい。そんな彼に最終的には4番・一塁・キャプテンの三役を任せざるを得なくなったのは彼にとっては余りにも酷だった様に感じる。ただ、それは小久保本人の問題ではない。彼の衰えという事実から逃げ、昨年不十分な形ながら敢行された若手抜擢の気運を更に盛り上げようとしなかった首脳陣に問題があるのだ。
ただ、この状況を作り出したのは決して起用法だけの問題ではない。指導方針にもメスを入れる必要がある。
今季、飛躍が期待された中西や小斎は同じように凡退するシーンが目立った。中西はどんなボールにも手を出そうとし、小斎は直球に振り遅れる。欠点ははっきり分かっているのに、タイミングの取り方やフォーム改造などの措置が殆どなされないまま1年が過ぎていったのだ。その原因は、立花コーチや秋山監督自身が悩んでいる選手にその場で何かアドバイスをする、という事が為されていないから、と考えている。
確かに「コーチの役目は選手に気付かせる事であり、必要以上に選手をいじってはいけない」と言うのは王氏も野村氏も話している鉄則であり、中島や中村(L)といった選手は技術的な課題があっても、待つ事・手出しをしない事で結果を残せる選手に成長した。ただ、何も分からずに悩んでいる選手には、その場で「気がつくきっかけ」を与えてあげることも重要なのではないか。そして「きっかけ」の提供はコーチが「いじる」事をせずとも、声をかける事だけでも十分出来るのではないか。事実、前述の中村の場合もデーブ大久保コーチの「飛ばすことだけを考えろ」の一言が長打力を取り戻すきっかけになっている。この発想が今季の秋山体制には欠けていたように感じる。
繰り返しになるが、中西や江川にとどまらず、鳥越体制の下伸びつつあるホークスの若手野手をファームで生き腐れさせない事はホークスの黄金時代を作るためにもきわめて重要なことだ。その為にも若手を我慢して使い、その場で反省させることで更に伸ばしていくという、育成を柱に据えている強いチームならどこでも為されている起用・育成体制の一軍への浸透を提案したい。