王ホークスを振り返る〜終章・秋山ホークスに求められるものとは?〜

本年もよろしくお願い致します。
(例によって敬称略です)


12年ぶりの最下位に終わった昨季。14年続いた王政権に終止符が打たれ、秋山コーチが新たに監督の座に就いた。94年にトレードでホークスに入団し、02年まで中心選手として活躍、評論家生活を経て05年にチームに復帰すると2軍監督、総合コーチ、チーフコーチと歩み、万を持しての監督就任。誰もが納得する形での監督就任になったことは、彼の監督人生において大きく意味があるだろう。少なくとも最初の1年は、采配ミスがあっても糾弾する声は大きくならないことが容易に想像できよう(ネットの世界では微妙なところだが…)。そんな恵まれた環境の中で、秋山が為すべきことは何なのだろうか?


それは大きく分けて2つ存在する。短期的な視点での「王政権の尻拭い」、長期的な視点での「秋山チルドレンの育成」である。
14年という超長期政権のもと生じたチームの歪みは第2章で指摘した通りであるが、特に投手陣の惨状は1年で解決できる問題ではないだろう。故障により、真のパフォーマンスが把握できない選手があまりにも多いからだ。まずは、投打共に「役割分担」を徹底すべきである。明石、金子、仲澤の起用法に明確な区別があっただろうか?柳瀬と佐藤誠、あるいは篠原とニコースキーの起用法に基準はあっただろうか?敗戦処理とセットアッパーの区別が出来ないような起用法が、中継ぎ陣崩壊を導いたことは明らかだ。その基準が明確であれば、選手も「ここなら自分」と納得してグラウンドに立てるし、落ち着いてグラウンドに立てる環境があれば、良い結果が自ずと出るはずだ。


同時に進めなければならないのが、秋山チルドレンの育成だ。V1メンバーの高齢化はさることながら、チームの柱・松坂世代が来年30歳を迎える。更に、本多・川崎・和田のようにメジャーへの色気を見せる選手がこの年齢層に固まっているため、何も対策を打たないでいれば、2011年以降の戦力ダウンは高齢化とメジャー流出のダブルパンチとなり、長期低迷の道が一気に開ける。照準は、和田・川崎の、最短でのメジャー流出年である2012年。ソフトバンクになってからのドラフトで獲得した、特に高校生にチャンスを与えていきたいところ。昨年台頭した松田や中西、岩崎は、王が残した置き土産だ。松田は我慢の起用に応え、中西は選球眼に才を見せる。岩崎は斉藤和巳を受け継ぐ可能性を秘めた本格派。彼らを3年かけてレギュラーに育て上げ、和田や川崎を笑って送り出すことが出来たとき、秋山は「名監督」への第一歩を踏み出すことになるだろう。小斉や田上のようなたたき上げの抜擢も含め、ファームとの風通しを良くする事が出来るだろうか?彼の手腕が問われる。


勿論僕は、秋山に期待している。期待しているからこそ、「優勝」という単語は最低でも1年封印しようと思っている。肝心なことは、今年の秋山が結果を残せなかった時、ファンやメディアが「王」の名前を持ち出し、無用なプレッシャーを与えないないことだ。秋山色のチーム作り。その道程をしっかり見届けていこうではないか。