今季総括04

投手編第2弾。


今回はポイントの検証。改めてポイントを挙げてみると

1.選手起用にメリハリはついたか?
2.「秋山チルドレン」は育成できたか?

先ず最初のポイントについて。今季は摂津とファルケンボーグの台頭により、勝ちパターンとそれ以外の中継ぎの分断がなされた。また、ワンポイントリリーフは極力行わない方針が採られ、三瀬や篠原といったワンポイントを仕事にしてきた投手の登板数が激減した。一方増加したのは先発・リリーフ間の配置転換だ。

藤岡(リリーフ→先発→リリーフ)
大場(先発→リリーフ→先発)
大隣(先発→リリーフ→先発)

一般に先発投手とリリーフ投手の調整方法は全く異なり、極端な説ではキャンプの段階から調整を変えていく必要が在るとも言われている。勿論シーズン途中での配置転換は相当なリスクを負うはずであり、本来その役目は水田のようなベテランが負うべきものなのは明らかだ。
しかし秋山采配ではその役目を、将来先発の柱にならなければならない若手に強いた。新垣や和田の故障という事情を考えても、この無意味な起用が彼らにとってプラスとなったのだろうか?場数を踏む事に意味がある、という意見もあろう。ただ、若いうちに便利使いをした結果が木佐貫や大竹の苦労に現れている。彼らのたどった道を見る限りその経験は決してプラスにはなっていない。いずれにせよこの起用の意義が問われるのは来年。大場や大隣が成績を残せるか。この一点にかかっている。


次のポイントの検証に移ろう。今季登板数ないし投球回の増えた25歳以下の投手は以下の通り。

岩崎(3回→4回1/3)
◎大場(13試合→22試合)
◎金(新人・1試合)
◎巽(新人・1試合)
◎藤岡(11試合→38試合)
◎森福(6試合→13試合)
◎※攝津(新人・70試合・新人王)


※参考:08年
岩崎(新人・1試合)
◎大隣(8試合→22試合)
◎大場(新人・13試合)
◎甲藤(登板なし→9試合)
◎久米(新人・40試合)
◎高橋秀(登板なし→20試合)
◎森福(6回→6回2/3)
△陽(登板なし→6試合)

上の表で◎を付けた選手は大学・社会人を経てプロ入りした選手を、△は外国人選手を示している。これを見てすぐ分かるのは高校生投手が岩崎以外全く居ない事だ。過去5年で見ても高橋徹(04年)、大田原・大西・川口(05年)、山田(06年)、岩崎(07年)、近田・有馬・鈴木・二保(08年)と10人獲得しているにも関わらず1軍登板を果たした投手すら岩崎1人だけなのだ。ちなみに同条件では、日本ハム(5人/10人)・楽天(3人/7人)・西武(2人/8人)・ロッテ(2人/14人)・オリックス(2人/6人)・巨人(2人/10人)・中日(2人/7人)・阪神(2人/7人)・横浜(4人/5人)・広島(4人/11人)となる。確かにどの球団も状況は似たり寄ったりなので一概に「ホークスは悪い」とは言えないのだが、獲得人数が多いにも関わらず登板人数が少ないという現状は、いかにホークスが高卒投手の育成に手間取り、チャンスも与えられていないかを現している。
果たしてホークスの高卒投手には何が足りないだろうのか。私は他チームの投手とホークスの若手に大きな違いがあるとは思わない。問題は1軍昇格への壁の高さだ。思えば王ホークス時代にも高卒投手への扱いは厳しく、寺原と神内以外は子ども扱いされチャンスすら貰えないという状況があった。それは近年の「使いながら角を取る」というトレンドとは明らかに逆行する動きである。
涌井と岸、あるいは斉藤和巳と和田を比較して分かるように、エースとなりうる投手は高卒投手であるという法則はNPBには脈々と流れている。だとすれば高卒投手の柱を欠くホークスが黄金時代を再び築こうと考えるならば、若手投手・特に高卒投手にチャンスを与える必要があるだろう。少なくともフロントは熱心にそのタイプの選手を獲得しているのだから。